むせ
むせるのって、からだの防御反応なのよ。
むせるのが、どうして防御なの?
むせるのには、理由があります。
誤嚥とは、通常食道にいくべき食べ物や液体が誤って気管に入ってしまうことですが、むせるのはそんなときです。気管にとっては異物であるものを外に出そうと、からだが反応し、むせとなって現れます。
むせている間は非常に苦しいものですが、この「むせる」という防御反応が現れない方がよっぽどこわいのです。
誤嚥はお食事中だけに限らない
「誤嚥」や「むせる」という言葉は、無意識のうちにお食事を連想させます。
確かにお食事中にむせる方は多くいらっしゃいますが、誤嚥という視点からみると、それは一例にすぎません。
誤嚥は、次の3つのタイミングで発生します。
- 01. 飲み込む前
ごっくんと飲み込むスイッチが入る前に、食道や気管に食べ物などが流れていってしまう。 - 02. 飲み込む瞬間
飲み込む際に、気管を閉じるタイミングがずれて、液体などが瞬間的に気管に入ってしまう。 - 03. 飲み込んだ後
お食事後、立ち上がったときに姿勢が変わり、のどに残った食べ物などが、遅れて流れ込み、
気管に入ってしまう。
お食事をしてしばらく経過した後に、のどの残留物を誤嚥してしまう危険性があります。
介護者の目が行き届かないタイミングでの誤嚥は、非常に危険です。
不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)
ほかにも睡眠時のだ液の誤嚥や、飲み込む機能の低下による「むせない誤嚥」もあります。
こういった場合、本人でさえ誤嚥している自覚がありません。このように、本人も気づかないうちに誤嚥してしまうことを「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」と呼んでいます。
むせたら、どうしたらいいの?
お食事中にむせてしまった場合は、お食事を一時中断し、前かがみの姿勢を取り、せきをしていただくよう促します。
気管に入ってしまった食べ物などを、外へ出すことが大切です。
介助者は、背中をさすりながら、落ち着かせてあげましょう。そばにいる人が落ちついているほど、安心するものです。
十分に落ち着いたら、一度大きくお口を開け、強く息を吐いてもらいます。のどに残る食べ物や痰を出してもらいましょう。
むやみに強く背中をたたいたり、むせた瞬間にお水を飲むよう促すのはよくありません。かえって誤嚥の危険性を高めてしまいますので、注意しましょう。
必要以上にこわがらないこと
一度むせてしまうと、とても苦しく、「またむせたらどうしよう…」という恐怖心から、やわらかいものばかりを食べ、栄養が十分に摂取できなくなってしまうことがあります。
しかし、むせる恐怖からお食事の摂取量が減ったり、栄養が偏ったりしてしまうと、体力が低下し、ますます食べられなくなってしまいます。
むせてしまっても、お食事はできるだけ摂っていただくように促しましょう。「食形態を変える前に」も参考にしてみてください。不安な場合は、専門職に相談してみましょう。
ぼく、むせるって悪いことなのかと思ってた!とても苦しいよね。
むせるのは、「誤嚥しているのに、むせない」よりはよいのだけど、本当は誤嚥なくむせないことが一番なの。お口の機能を維持・向上するための「嚥下体操」の大切さ、きっとわかってくれたと思うの。